JFF #807z 大蔵こころ選手・鈴木来人選手レポート

JFF「#807z」に乗り2023-24年のシクロクロス(CX)シーズンを戦う2選手にスポットを当て、新モデルについて、選手視点での感想などをお届けします。(取材日2023年9月中旬)

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大蔵こころ Okura Kokoro

早稲田大学 所属(2023年 CX世界選手権日本代表・ロード&トラックでも数々の優秀な戦歴を持つ)

女子選手の中でも特に小柄なこころ選手。長野県から愛媛の名門松山学院に進学、ただ1人初めての女子自転車部員として同学院女子選手の礎を作った努力家。その優秀な成績から早稲田大学に進学、自転車競技部ではロードからトラックそれにシクロクロスと活躍しています。OnebyESUのCXモデルとは昨シーズン、148cmのこころ選手がCXのトップレースで戦えるためのバイクとして「#807」を選んだことからスタート。このモデルで世界選手権に日本代表として参戦しました。そして、こころ選手のこれまでのトップレース環境下での経験値から、更にバランスを追求し設計して生まれたのが新モデル「#807z」のXSサイズです。

こころ選手は新しい「#807z」XSサイズについて次のようにコメントしています。「私の身長でも新しいモデルのXSは、フィット感があり、安定感も増して、結果として苦手な乗り降りやコーナリングもスムーズに行えると感じています。」

昨シーズンでのSサイズのバランス感を損なうことなく、スタンドオーバーハイトを下げながらこころ選手がスムーズに担ぎ下ろしできる寸法を実測して設計しています。そして新型フォークを使用して更にバランス良く自転車と一体となれる様にアップデートされました。

昨シーズンも頑張り通したこころ選手ですが「今シーズンもOnebyESUと共に楽しく全力で駆け抜けたいです。」と彼女らしく優しくも芯の強いコメントを残してくれました。 夏はロードやトラックで多忙なレースの日々でしたが、これからは10月1日の稲城を皮切りに、各所でのCXレースに参戦予定です。応援宜しくお願いします。

鈴木来人 Suzuki Raito

OnebyESU ICV 所属 (2020年全日本CX U23優勝・22年CX W杯Flamanville29位・19/20/22年CX世界選手権日本代表・22年MTB アジア9位など)

2017年からOnebyESUアルミCXのファーストモデル「#803」に乗り、ジュニアで優勝するなど代々のシリーズをトップレベルで乗り続ける来人選手。「#805」では全日本U23で優勝しています。

2017年初代#803でレースに出場する鈴木来人選手

#803zで幕張CXのジュニアで優勝

#805で2020年全日本CX U23優勝

途中海外籍のチームでカーボンバイクにも乗っていた経験からも、OnebyESUフレームの総合バランスの優位性をよく知る選手であり、機材パーツにも詳しく、自らメカニックをこなすスキルもあり、製品開発にも深くかかわっています。(月刊サンエスウォッチング「Vol.41・53・55・59・63」も参照ください)

新モデル「#807z」のMサイズに乗るシーズン直前の来人選手に、長野県安曇野にてインタビューしました。

〜フレームに求める要素〜
  • <路面追随性>
  • #805から#807への開発経緯の中で、最終的にシートステーを扁平化させた事による効果が大きく、弾かれてライダーにダイレクトに衝撃がきていた部分がなくなり、路面のインフォメーションがしっかりわかるようになった。
  • #807zではシートステーの取り付け位置をやや下に変更したことも更に貢献しているようだ。
  • <耐久性>
  • CXレースを戦う上で求められる事、とにかく壊れないことが大事。明らかに条件が過酷なレースはもとより、頻繁な遠征中でのトラブルもなく過ごせることが大切。カーボンフレームにも劣らない軽量なアルミフレームはそのような強みを持っている。
  • <整備性>
  • 例えば泥レースに参戦すると1レースでオーバーホールが必要となってくる。その時に最も重要なのは整備性の良さ。外からアクセス(ケーブル類)が可能で組みやすいことは、整備上一番嬉しいポイント。敢えてディスクローターを前後同じ140mmにしている理由も、不測の事態に前後共通化することで対応できることにあり、すべてのレースで制動力に不安を感じたこともなく、こう言ったことが大所帯体制のチームではないトップレース参加者には肝になる。
  • <機能面>
  • #807zではダウンチューブのWレバー台座を排除しワイヤー変速時には専用設計のパーツを使用するようになったが、この台座が無くなった事によって、泥などが引っ掛かるきっかけが排除された。またシートチューブにボトルケージ台座を設けたことで、昨今有り得るボトルが必要なレースにおいて、ダウンチューブでは担ぎに支障が生じていたが、無理なく担ぐことができるように改善された。
  • <付加価値>
  • カラーオーダーにPANTONEが追加されて飛躍的に選べる色が増えた。CXレースではフレームカラーが他の選手と被りたくないと感じている者が非常に多いので、こう言った点も重要な要素だと思う。
〜フロントフォークの選択〜
  • <1.5サイズ>
  • OBS-CBD1.5THフォークは、1.5(1-1/2")サイズのテーパーであることとオフセットが48であることによって、細かな変化が連続するコースに向いており、特に低速から中速域での操作性が高い。また、ロングライド的走行にも向いていると言える。

2022年#807を1.5フォークで参戦

  • <1.25サイズ>
  • OBS-CBD1.5THフォークは、1.25(1-1/4")サイズのテーパーでオフセットが50.5となっており、高速制動時のコントロール性に優れ、スピードに乗った時の衝撃の入力がマイルドで、突き上げに対してもマイルドであり受け流しやすい。ハイスピードレース向きと言える。
〜ハンドル周りのセッティング変遷〜

カンティブレーキ時代では力を込めてブレーキをブラケットから握る場面が多く、ブレーキ操作のしやすさ中心のセッティングを行っていたが、ディスク化によってより操作が快適な方向となり、バニーホップがしやすいなどブレーキブラケットの位置関係もより近くにセッティングしたりと変化してきており、コントロール性に慣れたステム長はそのままにハンドルリーチで調整している。(使用ハンドルはリーチが短い60mmのOnebyESU ジェイカーボン マホラ ※大蔵こころ選手も同じモデルを選択している)

©︎大森美紀

〜総合評価〜

#807zは、クイックなハンドリング、コーナリングの安定性と直進安定性に優れ、日本に多いテクニカルなコースから世界基準のハイスピードなコースまでステージを選ぶことなくライダーの思い通りの走りをすることができる。これからCXを始める方から貪欲に勝ちを狙う選手まで全ての選手が満足する仕上がりになっている。「日本人のために作ったバイクだからこそのストレスのない走りをぜひ体感してください!」

〜これからのレーススケジュール〜

来人選手は10月1日の白樺湖を皮切りに、10月4日から25日までアメリカに遠征します。

  • <アメリカ参戦スケジュール>
  • 10月7-8日:Major Taylor Cross Cup
  • 10月13日:Trek CX Cup
  • 10月15日:UCI Cyclo-cross World Cup Waterloo(WC 初戦)
  • 10月21-22日:UCI Kings CX

ワールドカップも含め全てエリートクラスでの参戦となり、世界のトップ選手たちに混じって、ほぼ日本人がいないであろうレースで、新たなジャージを身にまとい戦います。主な国内参戦レースは、JCXシリーズ、UCIレース、全日本選手権などとなっています。応援宜しくお願いします。

あとがき

OnebyESUのCXフレームは全日本CXを9連覇したレジェンド「辻浦圭一」氏の礎のもとにあります。クロモリの#801アルミの#803からスタートしました。何本も作りテストし現在に至るフレームとフォーク。今でも、誰にも真似できない辻浦氏のスーパーバランス感覚を目の当たりにしたことを鮮明に憶えています。

人力機材スポーツの極みとも言える自転車競技の中でも、特に過酷な状況下であらゆるシーンを想定しクリアしなければならないシクロクロス。そこに潜む楽しさも罠も、すべてにおいて全くシンプルなことではないでしょう。ライダーから本当に求められるべき製品のバランスとは如何に・・・高速化にどれだけ対応してバランスを維持させることができるか、どれだけ安心感を与えることができるか・・・。バランスとは来人選手も言うように、求める要素に対応するものであり、それは対峙する環境にも応じるものなのだと思います。

大蔵こころ選手は小柄ながら多種競技で立派な成績を上げ、前回のCX世界戦での悔しさはひとつの大きな歴史として刻まれているのだと思いますし、それが今のこころ選手の土台となっていることでしょう。鈴木来人選手はスーパーバランスを追い求めて実直にこれからも努力と探求に奮闘して行くのだと思います。アメリカ帰りも楽しみです。